Art is long, life is short. という格言をご存知の方も多いでしょう。一般に「芸術は長く、人生は短し」と訳されたりしますが、もともとは古代ギリシアの医師ヒポクラテスの言葉に由来しています。Artと訳されている元の言葉「テクネー」は、芸術を含んでより広い意味で、人間による技術・技法一般を意味します。だからこの言葉は「人生は短いけれども、医術などの技術・学術を修得するには果てしなく長い年月を要する」といった意味合いになるでしょうか。
高校までの勉強は教科数が限られ、また範囲も限定されていたと思います。これに対して大学で学ぶ意義とその楽しさの一つは、様々な分野の学問に触れ、各々の分野の広がりと奥深さを感じ、その極め難さを実体験することにあります。ヒポクラテスの言葉は、私たちの前に開かれている知的世界の広大さを示すものと受け取ることもできます。これは何ごとかを真剣に忍耐強く学んだ人だけが目にすることのできる遥かなる眺望でしょう。
共通教育センターが担当する幾多の教養科目は、伝統的にはリベラルアーツ・自由学芸と呼ばれてきました。それは人間が自由な存在であるために学ぶ学問なのです。自由な人とは無用な束縛を受けていない人でしょう。ところが人は精神的な成長を止めてしまうと、気付かないうちに自分の考えを正しいと思い込む「病気」にかかり、自分自身を拘束するようです。そのようなわけで、私たちはみなさんとともに学び、精神の視野を広げて、互いの心に「自由」のそよ風を招き入れたいと願っているのです。