KUMAHO Web Column

看護学科

老年看護の役割

2021.03.15

日本は「長生き」の国

 日本は、世界的にみても人口に占める高齢者の割合が多い国です。2020年9月現在、65歳以上の高齢者は3617万人(日本の人口は、約1憶2千万人)、高齢化率は28.7%(人口に占める65歳以上の高齢者の割合)です。高齢者が多いということは、それだけ「長生き」だということがいえます。それでは、現在の日本人の「平均寿命」は、どれくらいなのでしょうか。「平均寿命」とは、その年に生まれた子どもがその後何年生きるか推計したものですが、女性87.45歳、男性81.41歳(2019年)となっています。もうひとつ大事なことがあります。ただ「長生き」というだけではなく、「健康」に生活しているかどうかも大事なことです。「健康寿命」という言葉があります。「健康寿命」とは、介護や病気により日常生活を制限されることなく健康的に生活を送ることのできる期間をいいますが、現在の日本では、女性74.79歳、男性72.14歳となっています。したがって、女性では平均寿命までの約13年間、男性では約9年間、自立した生活を送ることができず、日常生活において継続的な看護や介護、あるいは社会的な支援を必要として生活していることになります。

老年看護の役割

 老年看護は、人生の集大成の時期にかかわることになります。「健康寿命」からみえたように、高齢になれば何らかの病気や障害を抱えて生活している人が多くなります。また、こうした病気や障害は必ずしも「治る」とは限りません。人生の集大成の時期に、「治る」ことのない病気や障害をもち生活をすることは、たとえば、これまでできていたことができなくなるなど辛さや無力感を抱えながらの生活になります。それゆえ、病気や障害をもった高齢者がひとりの人間として生きることを支えること、その人らしく生活できるように支えることが必要になります。その人らしく生活できるように支えるには、「その人のもつ力」が発揮できるよう支援することが重要になります。看護職が大切にしなくてはいけないことは、「その人のもつ力」を信じてかかわることです。決して看護職が高齢者を援助するという一方的な関係をもつわけではないということです。どのような状況であっても、その人にとってよりよく生きること、生活するとはどのようなことなのかを高齢者と共に考え、高齢者自身の力が発揮できるよう、その人の生活にかかわりながら支援することが、老年看護の役割となります。

看護学科 教授 多久島 寛孝

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