KUMAHO Web Column

看護学科

弱ったこころや傷ついたこころをケアする精神看護

2021.03.01

「精神看護」ってどんな看護でしょう?

 こころの病気でポピュラーなものに「うつ病」があります。
 うつ病になると、気分が落ち込み、これまで楽しかったことや喜びを感じなくなります。
 うつ病で入院すると、看護師はどんなケアをするのでしょうか?
 こころは見えません。見えないこころの傷をどう癒せばいいのでしょうか?

 その知識や技術を学ぶのが精神看護学です。精神看護学では、たくさんのこころの病気や症状についての看護を学びますが、まずは、こころはどこにあるのか?どんな働きをするのか?ということから学びます。そして、こころに傷がつくとどんな症状として現れるのか?それは周りの人からはどう見えるのかを考えます。

 自分のこころの機能や働きについて考えたことはありますか?こころの機能や働きを学ぶとき、自分自身のこころを通して考えるとわかりやすいと思います。
他者とコミュニケーションをとるとき、自分自身の考え方や価値観が他者との関係に影響します。また、ストレスに対して自分がどんな反応をするのかなど、自分のこころの動きを知ることは他者(患者)を理解するために重要なことです。

 精神看護学では、こころの病気や症状の看護以外に、患者の権利を守り尊重することや安全を提供すること、精神保健福祉法などの法律や社会資源についても学びます。
 看護学は座学でたくさんの知識を修得しますが、同じくらい臨地実習が重要となります。看護学の実習は長期間に及びます。たくさんの領域の実習をしなければなりません。精神看護学実習はそのひとつです。

 実際に精神科の病院に実習に行き、受け持ち患者と信頼関係を築きながら看護計画を立案し、ケアを実施します。臨地実習は実際の患者の治療と生活の場を経験する重要な機会となります。

 精神疾患は、特殊な病気とみられることが多々ありますが、決してそうではありません。誰でも罹る可能性があるし多くは治る病気です。きちんと勉強して知識を得て実習に臨むことで未知への不安は軽減します。

 最後に「精神看護学」は、精神疾患の患者だけのためのものではありません。手術前の不安や、がんを告知された人の恐怖や悩み、病気や障害をもちながら地域で暮らしている人々のこころのケアも精神看護の役割です。また、感情労働者である看護師自身も人間ですから、誰かにケアされる必要があります。精神看護は精神科看護師にだけ必要な知識技術ではなく、どの看護師にとっても必要な知識・技術であると言えます。

看護学科 教授 北里 眞弓

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