KUMAHO Web Column

看護学科

看護は「幸せ」を追い求める職業幸せな子ども時代を支える小児看護

2021.03.15

 看護師として働いていた時に、恩師からいただいた「看護者は幸せであれ!」という言葉を、今もとても大切にしています。
 対人援助職である看護という職業は、相手の方といかに向き合っていくか、自分自身のあり様にかかっています。病気に関する専門知識があることは大前提ですが、それ以外にも人間を理解するための心理学や社会学等の知識が必要になります。自分自身が心身ともに穏やかな状況にいないと、健康を害した方のつらさや苦しさをありのままに受け止めることができません。そのため、自分自身の暮らしを整え、人と関わりながら生活の中に幸せを感じる感性を磨いていくことが大切になります。
 看護学を学ぶ学生に、最初によく伝えていることがあります。

 「幸」を分解すると 辛 + 一。

 辛い状況を、「一」を加えることで幸へと変換することが可能になる。そして、この「一」の意味を、相手の方と一緒になって考え支えていける存在に4年間かけてなっていきましょう。目の前にいる二人称の「あなた」だけにとどまらず、三人称の「彼ら」にまで発展して考えていけるようになりましょうと。
 複雑化した社会情勢だからこそ相手の人生に関わる覚悟が必要となりますが、看護は相手の方にとっても自分にとっても、幸せを追求できる職業といえます。人間が好きだという原動力さえあれば、大学で看護学を学ぶことが楽しくなるでしょう。

幸せな記憶を積み重ねる子ども時代

 小児看護学は、ライフサイクルの中でも小児期の子どもと家族を対象としており、子どもの健やかな育ちをめざしています。
 よく食べよく眠る。子ども時代に毎日繰り返される暮らしは、健康な身体を培い、周りの影響をたっぷり受けながら幸せな記憶を積み重ねてこころが育まれます。高校生のみなさんがそうであるように、「自律」して「自立」できる一人前の人間が18年の歳月をかけて育つのです。

 かつて歌人の俵万智さんは、子育ての日々を「たんぽぽの綿毛」に例えて謳っていて、その親子関係に、コロナ禍の今再び脚光があたっています。今は、病気以外にも、児童虐待に代表される子どもを取り巻く環境が子どもの育ちに大きく影響しているからです。これからの小児看護には、より豊かな子育て支援や家族の持てる力をひきだす(エンパワメント)支援が求められています。自らの子ども時代の実体験が、小児看護を考えていくヒントになりえますから、看護を志すみなさんの柔軟で新しい発想にとても期待しています。

看護学科 准教授 大澤 早苗

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