KUMAHO Web Column

医学検査学科

ミクロの特別捜査官・病理検査

2021.03.01

 私たちの体を形成している細胞は37兆2000億個と推定されており、それらはお互い支え合い協力して組織をつくり、また他の組織と連携し合い臓器を形成し、さらに臓器の集合体である人体という社会の中で生きています。それはちょうど人間社会に似ています。細胞社会も人間社会と同様に、秩序を乱す細胞があると、組織の機能は損なわれ、最終的には私たちの命を脅かすことになります。病理学とは、細胞、組織および組織の集合体である臓器を、肉眼や顕微鏡などを用いて検査し、それらが病気に侵されされているかどうかについて検査します。

 たとえば、画像診断(レントゲン、CT、MRI等)にて腫瘤(しこり)の発見は可能ですが、それが癌であるかどうかの最終判断をすることは困難です。画像検査により腫瘤が検出された場合、それが良性か悪性かを確実に診断しなければなりません。その診断は、病理診断といい、主に「組織診」と「細胞診」の2種類の検査があります。組織診は病変組織の一部を採取し行う病理検査で、特殊な手法で組織を薄くスライスして、様々な染色を施し病理組織プレパラートを作製します。その病理組織プレパラートを顕微鏡で観察し病変の良悪性の診断が行われます。正確な組織診のためには、精密な病理標本作製が必須です。病理検査学では、病理標本作製に必要な様々な病理学的知識と技術を学びます。一方、細胞診の対象は、組織診のような固形物ではなく、喀痰、尿、胸水、腹水などの非固形物です。それらの中には剥離した細胞が多数含まれており、その個々の細胞をバラバラの状態で観察します。細胞診では細胞のかたちの異常として『異型』という言葉を使います。一般的に悪性腫瘍は『異型』が強くなりますので、『異型』の度合いをもって良悪性を判断します。病理検査学では、正常細胞から悪性細胞の形態的特徴を学びます。一口に癌と言っても様々な癌が存在し、様々な癌細胞の形態を呈します。無数にある細胞の中から癌細胞を探し出す仕事は、まさにミクロ世界の特別捜査官のようなものです。私も35年に亘り細胞検査士として細胞診に携わってきましたが、興味の尽きない学問です。

医学検査学科 教授 南部雅美

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