KUMAHO Web Column

研究

内臓のリハビリテーション!?

2021.03.15

 内臓とは、心臓、肺、肝臓、腎臓、消化管などのように、胸やお腹の中にある臓器ですね。リハビリテーションというと、骨や筋肉の治療を思い浮かべるのが一般的ですが、内臓のリハビリテーションという専門領域も存在することを知っていますか?

 内臓の障害、つまり内部障害のリハビリテーションでは、狭心症や心筋梗塞のように心臓の筋肉への酸素供給に問題が起こり、全身へ血液を送り出す心臓のポンプ機能障害や、喫煙などの影響を受け、酸素の取り込みが障害される肺気腫と呼ばれる肺機能低下の治療として運動療法などの効果がよく知られています。

 実は筋肉ではマイオカインと呼ばれる少なくとも300種以上の様々な物質が作られており、適切な運動療法によってこれら多くの物質が調整され、体調を整える効果が得られると考えられます。しかし内部障害のリハビリテーションは、まだまだ未開拓・未解明の部分が大きくこれから発展する分野です。

 内部障害リハビリテーションの領域でもこのように運動療法が中心ですが、私たちの研究グループでは、入浴やサウナなど身近な温熱刺激が内部障害に及ぼす影響について分子レベルの研究を行っています。中でも慢性腎臓病モデルのマウスを用いて、日々の温熱習慣が腎不全の進行を遅延させることを、2016年に世界で初めて海外英文誌に報告しました。私たちは感覚神経で“温かい”、“冷たい”などの温度を感じますが、感覚神経以外の臓器の細胞でも温度センサーとなる温熱受容体の存在が既に分かっており、温冷の刺激は私たちの知らないうちに内臓の細胞内にまで影響を及ぼしているのです。

 “湯冷めをすると風邪をひく”、“捻挫や足をくじいたときは冷やすのが良い”多くの人が知っていることですが、実はこれらの詳しいメカニズムはわかっていません。私たちの研究はこれらメカニズムの解明につながります。温度刺激が細胞内に伝えるシグナルの詳細がわかれば、どのような温度を、どこの細胞に、どのくらいの時間や頻度で実施することで期待される効果が明らかとなり、新たな治療方法へと発展させることにつながります。温熱療法は物理療法のひとつですが、温めて心地よいだけではなく、運動療法以上にまだまだ発展の余地がある研究テーマなのです。ぜひ熊本保健科学大学で一緒に世界を変える研究をしましょう!

リハビリテーション学科 教授 飯山 準一
(内部障害リハビリテーション研究室)

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